Tシャツを構成する糸やデザインについて
普段何気なく着ているTシャツをここでは分解してみましょう。
夏になると、街にはTシャツを着た人が増えますね。Tシャツは風通しもいいし、誰でも気軽に着られる夏の定番アイテムです。
そのTシャツの厚さや、触り心地、伸縮性などは、Tシャツを構成する糸や縫い方で大きく変わります。その理由や名称、表示方法を知っておくと、これから服を買う時にも役に立つこと間違いなしです。着るシーンに合わせてこだわってみるのもおもしろいですし、買い物も今までよりも楽しくなりそうですね。
Tシャツを品質からこだわって買いたい人や、様々なタイプのTシャツが欲しい方にピッタリの情報をお届けします。
1. 糸の品質を左右する「番手」について
まずはTシャツをはじめ衣服全般に欠かせない「糸」についてです。Tシャツも例外ではなく、構成する糸によってTシャツが完成した時の質感やボリューム、厚さが変わってきます。
その原料は「綿花」。それを紡績することで糸ができあがります。
糸を作る時は不純物(葉っぱなど)が入りますが、そのゴミを取り除く「混打綿」という工程の後、絡まっている糸を解きほぐして1本の繊維にします。
その後、「カーディング工程」と呼ばれる工程に入ります。ここでは表面に付着した繊維を取り除きます。
そして、上質な糸を作る時は、さらに不要な繊維を取り除いて糸の表面をもっとキレイにする「コーミング工程」と呼ばれる工程を経た後、糸ができあがる紡績工程へと入ります。
今お話しした「カーディング工程」や「コーミング工程」をどこまでするかで、糸の表面の繊維をどこまで削るかが変わり、それが「糸の太さ」につながります。
Tシャツを構成する糸には「番手」という単位があります。「重さ1kgの糸に対して、その糸の長さが1kmのもの」を1番手といい、糸の長さが3kmなら3番手、10kmなら10番手となります。番手の数値が大きいほど糸が細く軽いことになります。重さは変わらず長さだけ伸びれば糸は細くなりますよね。100番手以上は「極細番手」とされ、非常に細く超高級とされます。番手は「太番手」「中番手」「細番手」という3種類があります。
・太番手・・・・・糸の太さは、20〜27mm
・中番手・・・・・糸の太さは、26〜28mm
・細番手・・・・・糸の太さは、28〜33mm
20mm以下の糸は太いので、縫い糸などの用途に使用されます。 細番手の糸を使ってTシャツを作ると、軽く風通しがいいTシャツになり、太番手の糸を使うと重たくて厚みのあるTシャツを作ることができます。
2. 糸の種類について
Tシャツの生地を構成する糸にも大きく分けて3種類あります。糸の太さによって肌触りや生地の見た目などに影響します。
カード糸
取り除く短い繊維は5%ほど。比較的太めの糸で中番手か太番手の糸になるという特徴があります。Tシャツに一番使われる素材です。シャリ感や清涼感があり、安く作れるのでTシャツなどの価格を抑えることができます。
コーマ糸
取り除く短い繊維は15〜20%ほどの高級糸。繊維の均一性を上げるために「コーミング工程」を施した糸のことで、仕上がりは高品質で光沢があり、柔らかい肌触りです。また洗濯をしても表面の美しさが長持ちします。
セミコーマ糸
取り除く短い繊維は10%ほど。このセミコーマ糸は国際基準ではなく、日本と中国間の独自の基準です。カード糸よりもケバなどが少なく光沢もあり、コーマ糸よりも同じ綿花からできあがる量が多いため安価に作ることができるのが特徴です。
Tシャツを作る際に、どの糸を使うかによってできあがった時の価格が変わります。
3. 糸の撚り方による着心地について
糸の撚り方によっても着心地が変わってきます。大きく分けて2種類があります。
オープンエンド糸
一つ目は「オープンエンド糸」と言われるもので、「空気紡績糸」や「空紡糸」などとも呼ばれます。空気圧で繊維が撚り合わさった構造をしていて、ふっくらしたボリューム感があり、自然な硬めの風合いに仕上がります。吸汗と速乾を併せ持っているので機能性重視の人向けで、アメリカンテイストを好む人にも人気です。
リングスパン糸
二つ目は「リングスパン糸」と言われるもので、「普通紡績糸」とも言います。こちらは糸の表面は滑らかで強度があり、シワになりにくいという特徴があります。日本で流通しているTシャツのほとんどがこのリングスパン糸を使用しています。
4. 服の生地について
ほぼ全面が肌と触れ合うこともあるTシャツは、その素材によって着心地も大きく変わります。また他にも素材によってメリットとデメリットがあるので、ここで詳しくご紹介していきます。
綿(めん)
Tシャツに一番よく使われている生地が「綿」です。肌触りが良く耐久性も高いことや、吸水性、保温性もあるのでTシャツのほかにもタオルや下着などのアイテムにも幅広く使われています。天然素材なので合成繊維のアレルギーを持っている方も快適に着ることができます。
ただ、その吸水性と保温性がデメリットにもなり、「汗をかくとベタつく」「乾きにくい」という欠点もあります。綿100%のTシャツの場合、洗濯することによって縮みやすいのでTシャツのタグを確認しましょう。
しかしやはり着心地と肌触りが良いので、Tシャツの定番素材といえますね。
ポリエステル
プラスチックの一種のポリエステルは化学繊維です。そのメリットの多さから、アパレル業界ではとても多く使用されています。非常に耐久性があり、伸び縮みにも強いのがその理由です。
他にも、素材が軽くてシワになりにくく、形状記憶性が高いのでお手入れも簡単で、速乾性もあるので汗をかくシーンにもオススメです。綿よりも縮みにくいので洗濯の時も嬉しい素材です。スポーツウェアに頻繁に使用されます。
ただ化学繊維がゆえのデメリットもあります。静電気を帯びやすい性質があるので冬になると着たくないという人もいるでしょう。他には通気性がなく吸湿性も低いため、汗をかくと不快だと感じることがあります。また可燃性ですので火の近くでは注意が必要です。
生地によってメリットとデメリットがありますが、日常で特に気をつけたいのはやっぱり洗濯ではないでしょうか?Tシャツをはじめ、服には「品質表示」タグがついています。ここを確認してその通りに洗濯するとその服が長持ちします。でも色々なマークがあってちょっと分かりにくいので、「Tシャツの品質表示と上手な洗濯の方法」の記事をまとめて作りました。
5. 服の編み方の種類について
糸の種類、撚り方、生地ときましたが、一番直接的に着心地や肌触りに影響を与えるのはTシャツの編み方です。代表的な編み方や織り方をご紹介します。
天竺(てんじく)
ニット生地の代表的な編み方で「平編み」「メリヤス編み」とも呼ばれます。横方向への伸縮にとても優れていて型崩れもしにくいのが特徴です。保温性にも優れているので靴下やカーディガンなどにも使われます。
逆に、縦方向へはあまり伸縮しません。
Tシャツに使われる編み方としては最も一般的で、生活着に最適です。
平織り(ひらおり)
縦糸と横糸を1本ずつ交互に織り込んでいく方法です。その為とても頑丈で耐久性にとても優れています。織り込んだ糸の間に隙間があるので通気性はいいですが、頑丈な分、伸縮性はあまりありません。
シャツにこの平織りがよく使われています。
裏毛(うらけ)
表は天竺編みで裏はらせん状(パイル状)に編まれたタオル地のような生地です。「パイル」とも呼ばれます。平織りの一種になります。
特徴としては、タオルのような生地のため吸水性に優れているほか、表面は滑らかで、裏面は柔らかく保温性にも優れています。
裏起毛(うらきもう)
これも裏毛と同様に平織りの一種です。裏毛のパイルを起こしたもので、その分生地の厚みが増す為、保温性、保湿性にとても優れています。その毛布のような着心地から冬には好んで着る人も多いでしょう。パーカー、スウェットなどでよく使われています。
ふわふわよりも吸水性重視の時は「裏毛」、ふわふわで保湿性重視の時は「裏起毛」が良いです。
鹿の子(かのこ)
平編みを変化させたもので、網目の模様が小鹿の背中の模様に似ていることからこの名前がつきました。表面が凸凹になるため肌との接地面が少なく、涼しさを感じやすく通気性にも優れています。
ポロシャツやスポーツウェアなど、夏に好まれる服の編み方です。
6. まとめ
ここまで糸の原料から、糸の撚り方、それを使って作る生地、さらに編み方までをご紹介しました。それによって、最終的には着心地や価格が変わってきます。Tシャツに関して言えば、機能面ではそのシーンに合わせて保温性、保湿性、乾きやすい、シワになりにくいなど様々あり、価格面では一枚1000円前後のものからブランドのTシャツでは無地のものでも35万円というものまであります。
これから服を購入される機会がありましたら、一度品質表示タグを見てみてもおもしろいです。お気に入りの服を長持ちさせるために、シーンやTPOに合わせてファッションを楽しんでくださいね。
Tシャツについては、着こなし方やTシャツの単位などについては「Tシャツの基礎知識」を、AirPriで扱っているTシャツの色やサイズ、厚みなどについては「AirPriのTシャツについて」で詳しくご紹介しています。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。